ちょっとだけ不思議な昆虫の世界(3)

今回で2度目の引っ越しです。 さりげなく(Sally Genak)虫たちの不思議な世界を紹介しています。

2016年09月


ガムシは、タガメやゲンゴロウと並んで国内最大級の水生昆虫だが、
近年の生息環境の変化から、各地で絶滅危惧種となってしまった。

 ⇒もう20年も前の話であるが、徳島に住んでいたころ、
  当時も貴重品(?)だったタガメやミズカマキリを飼っていた。
  たまたま別の虫関係の取材で会社に来ていたテレビ局のクルーが、
  自宅にタガメがいることを知って、撮影するために立ち寄ってくれた。
  当時の有名な女性レポーターは、タガメを触りたがっていたが・・・


全くの個人的な意見なのだが、絶滅危惧種という言い方は好きではない。
別に人間が環境を変化させなくても、あるいは直接関与していなくても、
過去には、数え切れないほどの生物が絶滅しているのだから、
人間が他の生物種の絶滅を危惧する必要はないわけで・・・
【注】

 ⇒ただ、ある特定の生物に対する人間の保護活動については、
  テレビや雑誌でも取り上げられることがしばしばあり、
  子供たちが「自然とは何か?」を考えるキッカケになっているので、
  絶滅しそうな生物種の選定と保全活動は今後も続けるべきだと思う。


  




少なくともガムシは、絶滅危惧種というより、希少種(珍品?)の方が・・・


というわけで、ガムシは、常夜灯で出会ったのは今回が最初だが、
おそらく、これが最後の出会いかもしれない・・・多分。





ガムシ(ガムシ科)
イメージ 4
2016年9月4日 志賀坊森林公園・青森

撮影場所は、いつもの志賀坊森林公園の街灯で、
早朝に、帰りそびれた2個体を発見した。

まさか、こんなところで出会えるなんて!!!

 ⇒ガムシも、ゲンゴロウと同じように飛翔力を持ち、
  夜間、灯火に飛来することがあるので、
  たまに、常夜灯付近で発見されるようだ。


この日は、夜明け前から濃い霧が発生しており、
志賀坊森林公園の駐車場からは、雲海が見えていた。

この場所には、早朝に数10回も訪れているが、
ガムシに出会ったのは今回が最初である。
もしかしたら、濃い霧の発生と関係するかもしれない。

 ⇒撮影日の雲海の写真は、以下の記事に掲載しています。

  【クサカゲロウの仲間の幼虫】
    ↓   ↓   ↓
   http://sallygenak.livedoor.blog/archives/2016-0914









ガムシ(ガムシ科)
イメージ 1
2016年9月4日 志賀坊森林公園・青森

ガムシの仲間は、日本各地の池などにいたようだが、
近年は、理由はともかく、かなり少なくなったと言われている。


日本に生息するガムシの仲間は、以下の4種が知られている。

ガムシ           Hydrophilus acuminatus          北海道・本州・四国・九州
コガタガムシ   Hydrophilus bilineatus cashmirensis   本州・四国・九州・トカラ列島
コガムシ          Hydrochara affinis             本州・四国・九州
エゾヒメガムシ Hydrochara libera              北海道・本州・九州








ガムシ(ガムシ科)
イメージ 2
2016年9月4日 志賀坊森林公園・青森

写真同定を依頼した友人「にゃおと氏」によると、
ガムシ類は、大きさでかなり識別できるようだ。

彼によると、
 ガムシ:       33~40mm
 コガタガムシ:    23~28mm
 コガムシ:     16~18mm
 エゾガムシ:     16~18mm
なので、下の2種以外はダブリがない。

 ⇒写真の子は、正確には計測していないが、
  微妙に3cm程度と記憶している。
  コガタガムシは、南方系の種なので、
  青森で発見されることは、おそらくないだろう。


というわけで、この子は、ガムシで間違いないと思う。









ガムシ(ガムシ科)
イメージ 3
2016年9月4日 志賀坊森林公園・青森

薄明るくなってきたので、ストロボなしで撮影。

 ⇒やっぱり、大型の甲虫は迫力がある。
  立派なツノや大あご触角も、
  さらには長い触角もないが、
  やっぱりカッコイイ!!!



まだまだ、帰る気配がないが、撮影場所の近くに、
池や沼を見かけないので、この子たち(2匹)は、
かなり遠くから飛んできたのだろうか?







【注】地球の生命の歴史を見れば明らかなように、
   生息環境が変化すれば、それに適応できない種は、
   過去にも沢山絶滅している。
   個人ブログなので、誤解を恐れずに書いてしまえば、
   人間の作った畑で農薬を使用した影響で絶滅してしまうような、
   そんな軟(やわ!)な生物種なんて、そもそも出現してこないと思う。
  
   また、最近はあまり耳にしなくなったがようだが、
   マスコミなどが好んで使用した「自然保護」という言葉も嫌いだ。
   自然を保護するなんて、人間は・・・・そんなことができるのだろうか!?

   ちょっと前に流行った「無農薬栽培」は、もっと嫌いなのだが、
   これ以上書くと、沢山の人たちを敵にしてしまうし、
   本来のブログの目的とも、違う方向に行きそうなので・・・









自宅近くの雑草地で、さりげなく巣を張るクモを見つけた。
色彩的にあまり見かけないクモだ。


出会った直後の写真は、後回しにして、
まずは、出会いから約30秒後に撮った、
個人的には「かなりの衝撃」を感じた写真から・・・






イメージ 1
2016年9月17日 弘前市・青森

ネットを張っている赤っぽいクモの写真を撮り、
さらに、2枚目と思って近づこうと足元を見たとき、


突然・・・・・・・消えた!!!



気配を察知したのか、すぐ近くのヨモギの花穂に、
あっという間に逃げ込んだのだ。


 ⇒自宅に帰ってから、撮ったこの写真を見ると、
  はっきりクモの姿を確認できるのだが、
  現場では、一瞬見失ってしまったのだ。

  これも、強制的にピントを合わせられる写真の威力なのか?








イシサワオニグモ(コガネグモ科)
イメージ 2
2016年9月17日 弘前市・青森

この写真が、出会った直後に撮った1枚だ。

かなり色彩変異が大きいことで知られるが、
こんな感じの赤色のまだら模様は、
イシサワオニグモで間違いないだろう。


 ⇒このよく目立つ(!)大きなクモが、
  一瞬にして目の前から消えたのだ。

  まるで忍者のように!!








イシサワオニグモ(コガネグモ科)
イメージ 3
2016年9月17日 弘前市・青森

よく見ると、クモの糸が写っているが、
この糸を伝って、花穂の中に逃げ込んだのだろう。

通常の場合、イシサワオニグモは、
巣の近くに、葉っぱを丸めた隠れ家を作り、
危険を察知すると、すぐにその中に逃げ込む。

 ⇒もしかして、ヨモギにネットを張る場合には、
  隠れ家を作る必要がないのかも・・・?








イシサワオニグモ(コガネグモ科)
イメージ 4
2016年9月17日 弘前市・青森

それにしても、脚のまだら模様の赤色と、ヨモギの花穂の赤色は、
偶然の一致とは思えないほど、色調がよく似ている。

こんな雰囲気は、ブログのタイトルのように、
ミラクル擬態のハイイロセダカモクメ幼虫と全く同じだ。

 ⇒秋になって、ヨモギの花穂が目立つようになると、
  ここ数年間は、さりげなくハイイロセダカモクメ幼虫を、
  探してしまうのだが、他にも同じ雰囲気の虫がいたのだ


美麗種でもあるイシサワオニグモは、いろいろな場所で見つかるので、
虫マニアの被写体になることが多いと思う。

しかし、どちらかというと警戒色的な目立つ色彩なので、
まさか「彼らがヨモギの花穂に隠蔽的擬態している」なんて・・・【注】

 







・・・イシサワオニグモの色彩変異の例を示そう。





イシサワオニグモ(コガネグモ科)
イメージ 5
左: 南会津・福島(20160730)
右: 玉川ダム・秋田(20121027)

上記2個体は、やはり目立つ色彩なのだが、
これまでの写真とは、まるで別種のような雰囲気だ。


この子たちが、ヨモギの花穂にいても、
色彩的にやや異なるので、すぐに見つかってしまうだろう。

・・・というか、もしかしたら、この子たちは、
ヨモギに巣を張ることはないのだろう・・・多分。


 ⇒ネット情報によると、イシサワオニグモは、
  黄色、橙赤色、茶褐色、黄緑色など、
  色彩変異が多い種なのだが、ヨモギに巣(ネット)を張るのは、
  当然のこととして(?)、赤っぽい個体に限られるのかもしれない。







【注】安易に隠蔽的擬態という用語を使用してしまったが、
   このクモは、色彩だけで、姿かたちまで似せていない。

   だから、枯れたセリ科植物の種子にいるアカスジカメムシのように、
   警戒色でありながら、特別な場合には保護色の範疇になるのと、
   基本的には同じなのかもしれない。


   隠蔽的擬態の注意すべき点については、以下の記事をご覧ください。

   【隠蔽的擬態は本当にあるのか?】
     ↓   ↓   ↓
    http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150210/1/







以前このブログで、ミュラー型擬態の紹介をしたことがあって、
数種のスズメバチが、非常によく似た形状なのは、
あるいは、ゲンジボタルとヘイケボタルが似ているのは、
近縁種だから当然のことで、ミュラー型擬態の範疇には含まれないと、
勝手に解釈していた時期があったことを白状(?)した。

【これはかなり不思議: ミュラー型擬態】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101114/1/


しかし、ミュラー氏によるミュラー型擬態の発見の経緯は、
「近縁で別種」のマダラチョウ類の中で、
起こっている現象であることを知った。

詳細な経緯と問題点(?)については、
是非とも、以下のブログ記事をご覧ください。

【スズメバチの仲間はミュラー型擬態なのか?】
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150202/1/


だから、スズメバチやアシナガバチが、黄色と黒色の縞模様で、
素人では同定できないほど良く似ているのは、
「共通祖先が同じだから当然」と考えるのではなく、
それ以外の形状や色彩の突然変異種が生じても、
排除されてしまった結果と考えた方が良いのだろう。



前置きが長くなってしまったが、今回のマライセヒラクチハバチは、
一般的な(?)なミュラー型擬態の定義に合致する【注】





マライセヒラクチハバチ(コンボウハバチ科)
イメージ 1
2016年7月3日 白岩森林公園・青森

まずは、写真のハバチの同定から・・・

ネット情報では、ヨウロウヒラクチハバチ属 Leptocimbex には、
日本から以下の3種が記録されているようだ。

 Leptocimbex malaisei Takeuchi, 1939  マライセヒラクチハバチ  本州・四国
 Leptocimbex terrificus Malaise, 1931   (和名なし?)        本州
 Leptocimbex yorofui (Marlatt, 1898)   ヨウロウヒラクチハバチ  本州・四国・九州


今回の被写体は、前翅の模様と脚の色から「マライセヒラクチハバチ」と写真同定した。







マライセヒラクチハバチ(コンボウハバチ科)
イメージ 2
2016年7月3日 白岩森林公園・青森

これは、どう見てもスズメバチだ。
ただ、スズメバチにベイツ型擬態しているのではない。

このブログで何度も紹介しているように、
スズメバチの仲間が擬態のモデルになっていることは多い。
アブや蛾、カミキリなど沢山の種類がスズメバチに擬態する。
いずれの種も、他に防御手段を持っていないので、
この場合は、典型的な「ベイツ型擬態」である。

ただ、ハバチ類は、外敵に向かって防戦するはずなので、
基本的には、ミュラー型擬態なのだろう【注】







マライセヒラクチハバチ(コンボウハバチ科)
イメージ 3
2016年7月3日 白岩森林公園・青森

冒頭で述べたように、何らかの防御手段を持っているものが、
互いによく似た形態・色彩になる現象を、
その発見者の名前をとって、ミュラー型擬態と呼ぶ。

有毒昆虫は、独自に別々の警戒色を持っているよりも、  
同じような形態・色彩であった方が、捕食者の学習の回数が増えて、
より効率的に、攻撃を避けることができるからである。

 ⇒捕食者に覚えられる形態・色彩パターンの少ない方が、
  被食者にとっては、生き残る上では有利であり、
  必然的に、似たような色や形の種類が多くなるのだろう。







マライセヒラクチハバチ(コンボウハバチ科)
イメージ 4
2016年7月3日 白岩森林公園・青森

確かに、コンボウハバチ科の仲間は、互いによく似ていて、
いずれも、スズメバチのような雰囲気を持っている。

ただいずれも、ハチ目であり、類縁関係が近い種が、
お互いに似ているのは、共通祖先が同じだから当然のことで、
わざわざ擬態を持ち出さなくても説明できる。

 ⇒ベイツ型擬態では、信号受信者は、
  「味の良い(危険でない)擬態種も避ける」ので、
  つまり、だまされていることになり、
  これは擬態の定義に合致する。

  【君の擬態はどっちだ?(ミュラー型かベイツ型か??)】
   ↓   ↓   ↓
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110602/1/







マライセヒラクチハバチ(コンボウハバチ科)
イメージ 5
2016年7月3日 白岩森林公園・青森

ところが、ミュラー型擬態の場合には、
信号受信者は、類縁関係があろうとなかろうと、
そんなこととは全く無関係に、良く似た姿かたちの集団の全メンバーを避けるのだ。

信号受信者は、決してだまされているわけではないし、
もちろん、モデルと擬態種の区別もない!!!

だから、擬態の通常の定義から言えば、ミュラー型擬態には、
何処にも「信号受信者をだますという」擬態の要素は、全くないことになってしまう【注】




【注】ただ、ハバチ類の擬態に関しては、話がちょっとだけ複雑である。
   典型的なミュラー型擬態であるドクチョウ類やホタル類などは、
   体内の有毒物質(不味成分)を持つことに由来する防御効果なので、
   雌雄による差は、基本的には全くないはずだ。

   ところが、ハバチ類には、スズメバチのように強力な大顎(おおあご)がないので、
   武器として(?)針を持たない雄は、明らかにミュラー型擬態の定義から外れ、
   典型的なベイツ型擬態の範疇になってしまう。
   
   そこには、明らかに「だまし」が存在するのだが・・・


   





シギゾウムシという異様に長い口吻を持つゾウムシの仲間がいる。

日本では、クリシギゾウムシ、コナラシギゾウムシ、
クヌギシギゾウムシの3種が有名であるが、
ややこしいことに、それぞれの植物名(どんぐり)だけを、
幼虫のエサとするのではないので、多少の混乱もあるようだ。

 ⇒もちろん、それ以外のシギゾウムシの仲間もいて、
  植物名の付かないクロシギゾウムシやミヤマシギゾウムシ、
  さらに、同属のよく似たニセコナラシギゾウムシもいる。


というわけで、今回コナラのどんぐりで見つけたシギゾウムシが、
間違いなくコナラシギゾウムシであるのかは微妙なのだ。



普通に考えれば、被写体となった2匹のシギゾウムシは、
コナラシギゾウムシが一番近いと思われるのだがが、
ネット上で見かける写真は、茶色っぽい個体が多いようである。






まずは、口吻の長さをご覧ください。




多分コナラシギゾウムシ(ゾウムシ科)
イメージ 1
2016年9月3日 白岩森林公園・青森

この写真で明らかなように、口吻の長さは自分の体長よりも長い。
あまりにも長すぎて、歩くのに苦労するほどだ・・・多分(?)。

 ⇒もちろん、産卵するためにこの長さが必要なので、
  雄の口吻は、雌の半分ほどしかない。


前述のように、ネット上で見るコナラシギゾウムシの写真は、
茶色から褐色の個体ばかりで、黒っぽいものはなかった。

 ⇒新鮮な個体は、通常は淡褐色~褐色の鱗毛でおおわれているが、
  その鱗毛がが抜け落ちると、黒っぽく見えているのかもしれない。
  黒褐色の種として、クロシギゾウムシがいるが、
  体に橙色の紋があるので識別可能だ【注】








多分コナラシギゾウムシ(ゾウムシ科)
イメージ 2
2016年9月3日 白岩森林公園・青森

交尾を終えたコナラシギゾウムシの雌成虫は、
まだ若いどんぐりに口吻で穴をあけて、その中に産卵する。

 ⇒写真の子は、「さぁ これから穴を開けるぞ!」
  という並々ならぬ決意が見て取れる。


写真では分かりにくいが、口吻の真ん中付近に、
細い触角があり、直角に曲がっていることが多い。

何でこんな邪魔なところにあるのか? と思ってしまうのだが、
実は、シギゾウムシの口吻には、側面に触角を収めるための溝があるのだ。







多分コナラシギゾウムシ(ゾウムシ科)
イメージ 3
2016年9月3日 白岩森林公園・青森

そして、しばらく観察を続けると、
ようやくここまで口吻を差し込むことができた。

写真をよく似ると、口吻がやや反り返っているほど、
力いっぱい押し込んでいることが分かる(?)


当然のことだが、折角長い穴を開けるのだから、
産卵管も長く伸びるはずで、穴の最深部に1個だけ卵を産み付ける。

産卵後の穴は、どんぐりの成長とともに、塞がれてしまうようだ。

内部で成長した幼虫は、どんぐりが地上に落下した後、
脱出して土の中で蛹になり、翌年の8月過ぎに成虫になる。

 ⇒すべてが理にかなっていて、人によっては、
  このことが、
  「不思議であるとも」あるいは「当然のことであるとも」、
  感じられる話であるが・・・








多分コナラシギゾウムシ(ゾウムシ科)
イメージ 4
2016年9月3日 白岩森林公園・青森

冒頭にも書いたことだが、シギゾウムシ類では、
虫と植物(ドングリ)の関係が専門化していない。

これには、ちょっとだけ不思議な理由があると思う。


どんぐりを食べる森の動物は、予想外に多い。
リス、ネズミ、鹿、鳥の仲間など、
多くの動物の大切な栄養源になっている。

人間も、昔の縄文遺跡から、どんぐりの殻が沢山見つかるので、
昔は、人間にとっても重要な食料だったのだろう。

逆に、植物側にとっても、自分の子孫を残すために、
毎年、沢山のどんぐりを生産するのに、落下する前にも、
地面に落下した後も、片っ端から食べられてしまうことに、
何らかの手段で対抗しなければならない。

 ⇒よく知られているように、その対抗手段が隔年結果である。
  だから、シギゾウムシの仲間も、一種類だけのどんぐりを、
  餌とするのを避けて、対抗しているのだろう。






【注】クロシギゾウムシと思われる写真が昔のフォルダーにあった。

   クロシギゾウムシ(ゾウムシ科)
   イメージ 5
   2011年6月1日 志賀坊森林公園・青森

   小楯板と中胸側板、第2・3腹節両端が黄色なので、
   この子は、クロシギゾウムシで間違いないと思う。



   

   


このブログでは、自分自身の体や模様を枯れ葉に似せて、
外敵の目を欺いて身を守っている虫たちを何度も紹介した。

例えば、以下のブログ記事をご覧ください。

【葉っぱの上でよく目立つ ムラサキシャチホコ】
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130821/1/


【枯れ葉擬態を見破る疑似体験①】 ・・・②と③もあります。
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20160203/1/


【枯れ葉? ミラクル擬態??】
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20131208/1/




しかし、これから紹介する子の考え方は、少しばかり違っていた。

苦労して、自分自身の体を微妙に枯れ葉や塵に似せるなら、
最初から本物を体に付着させれば、より現実的で良いじゃないか?

【擬態よりすぐれているのか? フタモンクサカゲロウ】
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110107/1/


【君はミノムシ? クサカゲロウ幼虫??】
  ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20131205/1/





今回は、新たに写真が撮れたものを、まとめて紹介したい。

ただ、クサカゲロウの仲間は肉食性なので、今年7月に紹介した、
脱皮殻や塵を背中に乗せるカメノコハムシ類の幼虫のように、
背景の植物の種類から、種の同定をすることはできない。

【アオカメノコハムシ幼虫 ちょっと不思議?】
  ↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20160826/1/

だから、今回の被写体は、クサカゲロウの仲間としか言えない。






以下、似たような写真ばかりです!!!






クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 1
2013年9月10日 梵珠山・青森

やっぱり、このリアルさは、
枯れ葉に擬態する虫たちとは全く違う迫力がある。

もちろん、これは「枯れ葉そのもの」の質感なのだ。

 ⇒クサカゲロウ類の幼虫には、
  体の表面に刷毛状の剛毛があり、
  その部分に塵や枯れ葉をひっかけているのだ。








クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 2
2013年9月10日 梵珠山・青森

しかも、これが動くとは

写真の左側に、幼虫本体(矢印の先!)が写っていて、
間違いなく枯れ葉を背負っているのが確認できる。

 ⇒ちなみに、ただのクサカゲロウ(ヤマト~?)の幼虫には、
  このような行動は見られないようだ【注1】

 






クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 3
2013年9月11日 白岩森林公園・青森

この子を最初に見つけたときも、、
雰囲気的に枯れ葉のようなゴミが落ちていると思った。

 ⇒この子も、おそらく動かなければ、
  私に発見されることはなかっただろう。







クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 4
2013年9月11日 白岩森林公園・青森

予想以上に動きが速く、動かなければ気づかなかった。

 ⇒確かに、動いてる!!!


カエルやカマキリなどの捕食者と同様に、
人間の目も、動くものを素早く察知するのは間違いない。








クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 5
2016年8月14日 白神・青森

この子が背負っている枯れ葉は、赤くてよく目立つ。

確かに、こんな感じで、枯れ葉やゴミ(?)が、
緑色の葉っぱの上に落ちていることがある。

 ⇒背中に背負う塵の種類は、
  食べカスや脱皮殻、枯れ葉などで、
  好みは種類によって異なるとされている。







クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 6
2016年8月14日 白神・青森

やっぱり、微妙に動いたので、被写体になった。

クサカゲロウ類の幼虫は、肉食性なので、
自ら移動しながら、アブラムシなどの小昆虫を探す。

 ⇒この違いは重要で、食植生のミノムシ類も、
  枯れ葉に身を隠す同じような行動が見られるのだが、
  葉っぱを食べた後の食痕が必ず残ってしまう。

 






クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 7
2016年8月11日 八甲田山麓・青森

この子は、やや雰囲気の異なる枯れ葉(?)で、
ゴミのようなイメージもある。
ただ、このゴミも動くので、かろうじて中に虫がいることが分かる。

 ⇒矢印の先に幼虫の上半身(?)が見える。







クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 8
2016年8月11日 八甲田山麓・青森

しばらく観察していると、アリが近づいてきた。
しかし、残念ながら、何も起こらなかった

ネット情報では、彼らのエサであるアブラムシ類や、
カイガラムシ類に随伴するアリ類からの攻撃を防ぐ機能もあるようだ。

 ⇒ところで、枯れ葉がなければ、どんな捕食者が、
  クサカゲロウの幼虫を襲うのだろうか?
  もしかしたらライバルのテントウムシ(??)・・・【注2】








クサカゲロウの仲間の幼虫
イメージ 9
2016年8月11日 八甲田山麓・青森

普段はやらないのだが、ちょっと失礼して、
ひっくり返させてもらった。

自分では起き上がることができなくなった幼虫は、
まさにクサカゲロウの幼虫の姿かたちだ!!




今回は、同じようなつまらない写真ばっかりだったので、
最近のお気に入りの風景写真を載せます。

このブログの撮影場所になることが多い志賀坊森林公園から見た、
まるで北アルプスの雲海ような景色でした。

イメージ 10
2016年9月4日 志賀坊森林公園・青森






【注1】ネット情報では、この日本産クサカゲロウ図鑑を見ると、
    クサカゲロウ類の幼虫が全て塵を背負っているわけではなく、
    掲載の33種のうち14種は、塵を背負わない種類とのことだった。



【注2】このような塵載せ行動に関しては、
    カオマダラクサカゲロウ幼虫を材料に、
    ナミテントウに対する防御的機能が、
    高知大学のグループにより詳細に研究されている。

    その結果、塵を背中に載せることにより、
    (1)捕食者からの餌であるとの認識とを阻害し、
    (2)物理的にも捕獲行動を阻害すること
    が実験的に証明されている。
 




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