ちょっとだけ不思議な昆虫の世界(3)

今回で2度目の引っ越しです。 さりげなく(Sally Genak)虫たちの不思議な世界を紹介しています。

2019年08月


何故か、触角が異常に長い小さな蛾のグループがいる。

名前も、そのまんま「ヒゲナガガ」と言うが、長いのは雄だけで、
雌の触角は、普通の蛾とほぼ同じ長さである・・・多少長いのかも?

 ⇒所属する科の名前は、ヒゲナガガ科であるが、
  種の和名は、最後にがふたつ並ぶので、
  がひとつだけになっている・・・(多分)








実をいうと、触角の長さが分かりやすい写真を撮るのは、非常に難しい。


クロハネシロヒゲナガ雄(ヒゲナガガ科)
SK-0243a
2018年5月3日 里見・茨城

この触角の長さは、やはり普通ではない。

 ⇒雄だけが長いので、何らかの交尾行動に関係しているようだが、
  残念ながら、交尾中のカップルに出会ったことがない。
 






クロハネシロヒゲナガ雄(ヒゲナガガ科)
SK-2041a
2019年5月14日 松本市・長野

名前のとおり、黒い翅の白い触角の長い蛾である。

 ⇒飛翔中には、触角だけが目立って、
  白い糸がフワフワ浮いているように見える。






クロハネヒゲナガ雌(ヒゲナガガ科)
SK-2040a
2019年5月14日 松本市・長野

雌の方は、短めのやや太い触角だが、雄と同じように左右に開いて静止する。

 ⇒幼虫の食草として、オオスズメノカタビラが知られており、
  おそらく、この雌は産卵準備中なのかもしれない。







オオヒゲナガ雄(ヒゲナガガ科)
SK-3006a
2019年7月10日 白岩森林公園・青森

冒頭に書いたように、触角と本体(前翅)を同時に撮るのは難しい。

 ⇒この写真も、前翅にフォーカスを固定して、
  何回かシャッターを押して、触角が写っているのを選んだ。








オオヒゲナガ雌(ヒゲナガガ科)
SK-2298a
2019年6月10日 白岩森林公園・青森

その名のとおり、やや大きめのヒゲナガガの雌である。

 ⇒昼行性の蛾でも、葉の裏に隠れて止まることが多いが、
  この子は、派手な模様のせいか、堂々とその姿を見せている。








ホソオビヒゲナガ雄(ヒゲナガガ科)

SK-3005a
2019年7月10日 白岩森林公園・青森

濃い褐色の前翅に、白色の細い帯が印象的な蛾で、
白く長い触角もまた、微妙に細く感じられる。

 ⇒それでも、目の前フワフワと飛んでいるときには、
  長い触角がはっきり確認できる。







ホソオビヒゲナガ雌(ヒゲナガガ科)
SH-7044a
2018年6月18日 矢立峠・青森

雌は、予想外にがっしりした体で、触角も太く逞しい。

 ⇒ネット情報では、幼虫の食草として、ネズミムギや、
  オオスズメノカタビラなどが知られているが、
  幼虫後期には、地面に降りて枯れ葉を食べるとされる。






それでは一体何故、雄の触角だけが異常に長くなったのだろうか?


よく知られているように、夜行性の蛾の場合には、
雄の触角は櫛(くし)型をしていることが多く、表面積を広げて、
雌の放出する性フェロモン分子を受容しやすくしている。

ヒゲナガガの場合には昼行性なので、視覚的に交尾相手を探すはずである。
だから、おそらく触角が長いことは、性フェロモン受容とは関係なさそうである。

 ⇒長くて目立つ雄の触角は、雌に近づき交尾しようとする場合に、
  雌の注意を触角に向かわせて、視覚的に雌をなだめ、
  そのすきに、交尾できればという魂胆かもしれない。

 ⇒あるいは、触角をさりげなく動かして雌の注意を逸らして、
  クジャクの翅のような役割を果たす可能性もあるかもしれない。

 ⇒実際に交尾行動を確認できていないので、全くの想像だが、
  長い触角で軽く雌に触れて、逃げないように微妙に捕獲したりするかも・・・

 ⇒カミキリの雄の触角のように、コンタクトフェロモンの可能性だって残されている。







日本(本州!)にはヘビトンボの仲間が3種知られていて、ただのヘビトンボと、
ヤマトクロスジヘビトンボとタイリククロスジヘビトンボである。

ただのヘビトンボは撮影現場で識別可能だが、クロスジの2種については、
パソコンの画面で、「特定部分の翅脈」を見て、以下のように識別する。

◎タイリククロスジヘビトンボ Parachauliodes continentalis
 前翅前縁寄りの太い翅脈(R脈)とRs脈で囲まれた第2室から出る翅脈は2本。
   
◎ヤマトクロスジヘビトンボ Parachauliodes japonicus
 前翅前縁寄りの太い翅脈(R脈)とRs脈で囲まれた第2室から出る翅脈は1本。
   







今年出会ったクロスジヘビトンボの2個体の写真で確認してみよう。


タイリククロスジヘビトンボ(ヘビトンボ科)
SK-2419aa
2019年6月25日 矢立峠・秋田


常夜灯のもとでは、このように翅を開いた写真も、比較的簡単に撮ることができる。

 ⇒この写真の緑枠の部分がポイントであり、
  黄色の線で囲んだ「第2室」から出る同定基準の翅脈は、
  右下に拡大すると、確かに2本(赤矢印)ある。










タイリククロスジヘビトンボ(ヘビトンボ科)
SK-2420a
2019年6月25日 矢立峠・秋田

個人的な感想だが、翅脈による識別が分かりにくかった個体もいる。
この子は、かろうじて翅脈の確認ができた。


 ⇒当日は、写真に撮れたのは4個体だったが、
  全て「タイリククロスジ~」であることが判明した。










ちなみに、「ヤマトクロスジ~」の例・・・


ヤマトクロスジヘビトンボ(ヘビトンボ科)
SH-0119a
2014年6月22日 だんぶり池・青森

ヘビトンボ類の成虫を、昼間見かけるのは比較的珍しいと思う。
私の写真フォルダーを見ても、この個体だけである。

 ⇒オレンジ枠部分の第2室」とされる部分から出る同定基準の翅脈は、
  確かに1本で、ピンク四角枠の中で確認できる。









そして、ただのヘビトンボは、昨年撮った写真だが・・・


ヘビトンボ(ヘビトンボ科)
SK-1199a
2018年8月12日 道の駅みわ・茨城

黄色をベースにした雰囲気で、クロスジ~の2種との見た目の違いは明らかである。

 ⇒昔、手で掴もうとして、噛みつかれそうになったことがある。









最後に、フォルダー内の整理中に偶然発見した貴重写真!!!


クロスジヘビトンボ2種のツーショット
SG-6530aa
2013年6月16日 矢立峠・秋田


クロスジヘビトンボ2種(タイリク~と、ヤマト~)が、
共存しているという指摘は、かなり前からあったようだ。

この写真は、全く偶然に撮ることができた2種のツーショットである。








以下、赤丸と緑丸の部分をトリミングした証拠写真!!!!


クロスジヘビトンボ2種の翅脈
SG-6530b
2013年6月16日 矢立峠・秋田

よくある2種の合成写真とは違って、トリミング拡大で多少とも見にくいが・・・

 ⇒これまで見てきたように「第2室」から出る脈で確認すると、
  赤矢印1本の個体が、ヤマトクロスジヘビトンボで、
  緑矢印2本のものが、タイリククロスジヘビトンボである。



初見の虫の名前を知りたいとき、現在のネット検索システムでは、
少なくとも所属する「目」の名前が分からないと、お手上げ状態になってしまう。

 ⇒さすがに、最近はめったに起こらないが、
  写真の撮影現場では、そのときに「???」の虫にも、
  たまに出会うこともある。



つい最近、経験したさりげない出来事・・・


君は何組???

SK-3054a
2019年5月20日 道の駅みわ・茨城

常夜灯付近の高い場所に静止していたので、とりあえず写真に撮っておいた。

撮影時には、カメラのモター画面で見ても、この子が何組なのかは、
恥ずかしながら、全く分からなかった。









君は何組???
SK-3055a
2019年5月20日 道の駅みわ・茨城

子供のころから、長年虫たちと付き合ってきた経験から、
もちろん、およその検討は付くのだが・・・

 ⇒少なくとも、チョウ目、カメムシ目、カブトムシ目、
  バッタ目、トンボ目、ハサミムシ目、シリアゲムシ目、
  ハチ目、ハエ目ではないことが分かる。

  カゲロウ目、カワゲラ目、アミメカゲロウ目、
  トビケラ目、その他、あまりなじみがない仲間は微妙!









君は何組???
SK-3056a
2019年5月20日 道の駅みわ・茨城

こんなことは、普通はないのだが、消去法を採用(?)すると、
カゲロウの仲間が一番近そうだった。

 ⇒腹部の模様がチラカゲロウにも似ているが、
  中・後脚が白っぽく、尾毛が2本あるはずなのだが、
  残念ながら、この2点は合致しない。


それにしても、ネット検索では、似たような写真が全く出てこない!!

カゲロウ類の最も特徴的な2本又は3本の尾毛がおそらく欠損して、
しかも、お尻の先が内側に湾曲しているのが原因で、
最終確認ができない状態が続いていた。

 ⇒誰もが経験することかもしれないが、
  カゲロウ類の成虫の写真をネット等で調べると、
  水生の幼虫については詳しく載っており、
  これでもか!と言うほど、沢山の写真や画像が出てくる。

しかし、最も知りたい成虫に関する記事がほとんどない。

さらには、亜成虫とか(もう一度脱皮する余分なもの)まであるので、
写真だけの同定をより困難にしているようだ。









しかし、2度目のチャンスが、さりげなく起こった?!


多分オオマダラカゲロウ(マダラカゲロウ科)
SK-3060a
2019年5月26日 矢立峠・秋田

何と、全く偶然にも、6日後の矢立峠の常夜灯で、
かなりよく似た雰囲気のカゲロウの仲間が見つかったのだ。

とりあえず、お尻の先が丸くなっている状態も含めて、
茨城の3枚の写真と雰囲気が似ており、3本ある尾毛もはっきり分かる。

 ⇒腹部の縞模様と、透明に近い翅、脚の色などから、
  おそらくオオマダラカゲロウの可能性が最も高いと思う。









多分オオマダラカゲロウ(マダラカゲロウ科)
SK-3061a
2019年5月26日 矢立峠・秋田

改めて最初の茨城の3枚の写真と比較してみると、
お腹の部分の縞模様と、やや内側に湾曲したお尻(腹部末端付近?)、
さらに脚の色が、お互いに(?)よく似ている。





・・・ということは、

最初の写真の子の尾毛は、何らかの理由で損失したのだろう。
よく見ると、脚も一部も欠損している。

 ⇒カゲロウの仲間の身体は、比較的貧弱な構造で、
  脚や尾毛は消失しやすく、そのような個体もよく見かける。


現時点では、最初の茨城の子も オオマダラカゲロウの可能性が高いが、
尾毛が欠損しているので、チラカゲロウの可能性も捨てきれない。

ただ、明らかに中・後脚が黒っぽく、頑丈そうな身体に見えるので、
オオマダラカゲロウである可能性が高そうだ。  









ちなみに、下の写真が以前撮ったチラカゲロウである。


チラカゲロウ(チラカゲロウ科)
SG-6636a
2013年6月23日 だんぶり池・青森

間違いなく、中・後脚が白っぽく、尾毛が2本である。
しかも、オオマダラカゲロウと違って、何となく弱々しい雰囲気が漂う。



それにしても、写真の2種に共通して見られる、
お尻の先の丸いものはなんだろうか?




私のパソコンのチョウ目の保存フォルダーには、あまりチョウの写真はない。
飛び回るチョウを狙って、どこかに静止するまで待ってることがないから・・・

むしろ、昼間活動する蛾の写真の方が多いくらいである。





以下、撮影順に・・・・

マドガ(マドガ科)
SK-2217a
2019年6月3日 ベンセ沼・青森

開帳15mm程度の小さな蛾で、幼虫時代は、
毒草として有名なキンポウゲ科のボタンヅルの葉を食べる。

 ⇒当然、野鳥類は、成虫も幼虫も捕食しないはずだ。





イカリモンガ(イカリモンガ科)
SK-3044a
2019年6月4日 梵珠山・青森

チョウのように舞い、ハチのように止まるので、撮るのに苦労する。

昼行性で翅をたたんで静止し、触角が細いというチョウの特徴を持つ蛾である。

 ⇒幼虫は、シダ類を食べて育つ。





ユウマダラエダシャクの仲間(シャクガ科)
SK-3042a
2019年6月4日 だんぶり池・青森

ネット検索しても、完全に一致する模様の蛾はいなかった。

おそらくユウマダラエダシャクの仲間だろう。





トラガ(ヤガ科)
SK-1957a
2019年6月9日 釈迦池・秋田

昼行性の蛾ベスト10には、必ず入るトラガは、近づいても逃げる気配がない。

 ⇒食草(ユリ科)起源の不味成分を体内に蓄積しているのかもしれない。




ホシオビコケガ(ヒトリガ科)
SK-2356a
2019年6月20日 白岩森林公園・青森

前翅は、白地に黒い斑紋を不規則に散りばめたような模様で、
おそらくは昼行性の蛾だと思うが、夜間に常夜灯にも集まる。
(写真の撮影時刻は、13時28分である)

 ⇒幼虫は、地衣類を食べ、黄色と黒の警戒色である。




ヒロオビオオエダシャク(シャクガ科)
SK-2475a
2019年7月8日 だんぶり池・青森

前種と名前は似ているが、見た目は全く異なる。

前翅の白い広い帯は、枯れ葉や枯れ枝に静止すると、
いわゆる分断職として作用する可能性がある。

 ⇒幼虫は、クスノキ科のダンコウバイなどの葉っぱを食べる。




ヒロオビトンボエダシャク(シャクガ科)
SK-2530a
2019年7月10日 白岩森林公園・青森

北国(弘前市)の周辺では、夏が近づくと、目の前をヒラヒラと飛ぶのを見かける。

分布が重なる近縁種に、(ただの)トンボエダシャクがいて、
飛んでいるときに、見分けるのはおそらく不可能であるが、
見かける頻度は、ヒロオビ~の方が多いようだ。

 ⇒幼虫はニシキギ科のツルウメモドキの葉っぱを食べるが、
  黄色と黒色の良く目立つ警戒色である。




これまで見てきたように、昼間飛ぶ蛾は、鮮やかな警戒色をしている。
逆に、ほとんどのチョウは昼間飛ぶのに、警戒色でない場合が多いようだ。

 ⇒ただ、気になるのは、ほとんどが白と黒の模様なのだ。
  もちろん、この配色は、緑の葉っぱのうえではよくっ目立つ。
  もしかしたら、ミュラー型擬態なのかもしれない。
  一部は、ベイツ型擬態の範疇かもしれないが・・・




真面目な重苦しい話題が続いたので、軽く虫たちの交尾中の写真を集めてみた。

最初は、分類群ごとにまとめるつもりで、パソコンの写真フォルダーを探したが、
今年は何故か撮れた交尾写真が少なく、とりあえずは、甲虫類だけ7種を掲載したい。

 ⇒しかも、普通種ばっかり・・・

 

以下、撮影順・・・


多分ルリハムシ(ハムシ科)
SK-2184a
2019年5月26日 座頭石・青森

さすがに最近は間違えることはなくなったが、一瞬アカガネサルハムシに見える。

 ⇒当初ドロハマキチョッキリとしていましたが、友人K氏の指摘により、
  ルリハムシに訂正しました。

上記写真の雌の個体には、赤色部分(赤色斑ではない)が微妙に見られ、
アカガネサルハムシのようなイメージになっている。

 ⇒そう言えば、今年に限って、何故かアカガネサルハムシの方に、
  あまり出会うことがなかったような・・・









ジョウカイの仲間(ジョウカイボン科)
SK-2210a
2019年5月26日 ベンセ沼・青森

ジョウカイの仲間の交尾は、雄が普通に雌の背後からマウントして、
そのまま反対方向を向いた(お尻が繋がった)状態へ移行する。

しかし、何等かの条件で、雌が仰向けになってしまうことがあり、
その場合は、雌がた雄を引っ張って、移動することが知られている。

(ヒガシマルムネジョウカイの交尾の様子が以下の記事にあります)

【ヒガシマルムネジョウカイ交尾中】
    ↓   ↓   ↓
 http://sallygenak.livedoor.blog/archives/2016-0623









カシワクチブトゾウムシ(ゾウムシ科)
SK-2216a
2019年5月26日 ベンセ沼・青森

ゾウムシには見えないようなゾウムシ、黒い目がちょっと怪しい。

ピンボケ写真のようだが、体に灰白色の鱗毛が密生するので、こんなイメージになる。

 ⇒前に2本揃えた雌の触角が可愛い?!
  ネット検索すると、全く同じ状態で交尾中の写真あり。









クルミハムシ(ハムシ科)
SK-2415a
2019年6月25日 白岩森林公園・青森

交尾中のクルミハムシの写真は、最近では超有名である。

北海道で最初に見た忘れられない光景は、薄暗くなった夕暮れ時に、
雌のお腹が、まるで光を放つ提灯のように白く光っていた・・・!?

(もう9年も前になるそのときの状況、 ブログ開始後2回目の記事です)

【お腹大き過ぎ クルミハムシ】
    ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20100911/1/

 虫たちは哺乳類とは異なり、交尾後に雌のお腹が膨らむことはないようだ。









ヒメカメノコテントウ(テントウムシ科)
SK-2446a
2019年6月26日 座頭石・青森

北国では、ヨモギの葉っぱで見つかることが多い小型のテントウで、
もちろんヨモギに付くアブラムシを捕食する。

 ⇒ナミテントウと同様に、斑紋にいくつかの変異があるが、
  写真は、最も普通に見られる基本型である。









マメコガネ(コガネムシ科)
SK-2477a
2019年6月26日 座頭石・青森

雑草地でも、林道でも、どんな植物でも見つかるイメージの小さなコガネムシ。

しかし、シダの葉っぱを食べているのは、あまり見かけない。

 ⇒日本在来種であるが 北アメリカに移入し、
  農作物の重要害虫となったことは、良く知られている。
  









ヨツスジハナカミキリ(カミキリハムシ科)
SK-3066a
2019年7月29日 座頭石・青森

カミキリの仲間で、最も普通に見かけるベスト5に入ると思う。

見つけても、カメラを向けることがほとんどなくなったが・・・?

 ⇒花に来ているときには、まるでハチのように見えるベイツ型擬態種である。








このページのトップヘ