ちょっとだけ不思議な昆虫の世界(3)

今回で2度目の引っ越しです。 さりげなく(Sally Genak)虫たちの不思議な世界を紹介しています。

2020年05月


東北6県の現状では、あまり意味がないのかもしれませんが、
県境をまたぐ不要不急の外出を自主的に避けていますので、
今年は近場の「だんぶり池」に出かける機会が増えました。

そして、あっという間に北国の早春が過ぎ去ってしまいました。



今回から3回に分けて、ある日(5月23日)のだんぶり池で見つけた虫たちを、
同定できた種類のみですが、写真撮影順に、すべて紹介したいと思います。

・・・と言っても、実は、
だんぶり池の東側にある100mほどの車道を、約1時間かけて往復して、
とりあえず見つけた虫たちを片っ端から写真に撮っただけです【注】

 ⇒帰宅後に、比較的楽に同定できたのが約30種(雌雄が2組)なので、
  約2分に1回は、次々と別の種が見つかったことになります


【注】基本的な撮影スタンスとして、いつもとあまり変わらないのですが、
   普通に歩きながら、目に見えた虫たちの写真を撮ります。
   ですから、地面の落ち葉をや石、枯れ枝などをひっくり返して、
   潜んでいる虫たちを探し出すことはしません。
   また、葉っぱの表面にいる虫たちが、慌てて裏面に隠れた場合も、
   そっと手に持って裏側を見ようとすると、地面に落下したり、
   飛んで逃げてしまうので、よほどのことがない限り・・・しません。
   もちろん、ビーティングやスイーピングもしません。









それでは、撮影時刻を表示して、順に紹介します。


アシブトハナアブ雌(ハナアブ科)【12:32】
SK-4194a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

路肩に車を停めてから、助手席にあるカメラを手に持って外へ出た瞬間に、
目の前を飛んで、すぐに葉っぱの上に着地したので、とりあえず撮影しました。

 ⇒胸部背面の白っぽい模様が、光の反射ではっきりしませんが、
  このあたりでよく見かけるハナアブなので、ほぼ間違いないでしょう。

撮影は12時32分、本日最初の被写体でした。







多分セモンカギバヒメハマキ(ハマキガ科)【12:34】
SK-4196a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

個人的に初見のハマキガなので、おそらくやや稀な種のようです。

ネット情報では、よく似た種が数種いますが、微妙に模様が異なるので、
セモンカギバヒメハマキでほぼ間違いなさそうです。







アオハムシダマシ(ゴミムシダマシ科)
【12:36】
SK-4198a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

前回の記事で紹介したスゲハムシに雰囲気がよく似ていますが、
よく見ると、胸部が楕円形で長いので識別可能です。

また、興味深いことに、本種にもスゲハムシ同様の色彩多型があります。

 ⇒だんぶり池周辺では、個体数はそれほど多くなさそうです。







ヒメクシヒゲガガンボ(ガガンボ科)
【12:36】
SK-4200a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

名前のとおり、やや小さめの雄の触角がクシヒゲ状になっているガガンボで、
ハチにベイツ型擬態しているのかもしれません。

 ⇒私は騙されませんが・・・?!

幼虫が水中で生活するためか、だんぶり池周辺で比較的よく見かけます。







マドガ(マドガ科)【12:38】
SK-4204a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

日本固有種とされるマドガは、昼行性の小さな蛾で、早春から出現します。

 ⇒結構頻繁に飛び回って吸蜜しているので、
  蛾の仲間とは思えない雰囲気です。








カタクリハムシ(ハムシ科)【12:42】
SK-4207a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

胸部の雰囲気が特徴的な赤茶色の小さなハムシで、ユリ科植物の葉を食べます。
小さなハムシの仲間は、写真同定が難しそうですが、微妙な特徴があれば大丈夫です。

 ⇒このような赤いハムシの仲間は、葉っぱの上でよく目立つちます。
  体内に不味成分を持っており、多くの捕食者が避けるので、
  典型的なミュラー型擬態になるのだと思います。









クロマダラエダシャク(シャクガ科)【12:42】
SK-4209a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

よく似た模様の種が多い中で、運よく斑紋の絵合わせをすると、
何とか、クロマダラエダシャクと写真同定できました。

 ⇒偶然か必然か、私にとっての初見の蛾でした。







アシブトハナアブ雄(ハナアブ科)【12:44】
SK-4213a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

最初に見つけた雌に比較して、腹部が明らかに先細りになっています。
幼虫は水中で育つので、このあたりではよく見かけます。







トゲカメムシ幼虫(カメムシ科)【12:45】
SK-4215a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

すぐ上の写真に、さりげなく一緒に写っていたカメムシの幼虫。
この時期に老熟幼虫がいるということは、間違いなく幼虫越冬です。

ツノアオカメムシとならんで幼虫越冬するカメムシの代表だと思います。

【カメムシ幼虫の比較同定②(クサギカメムシとトゲカメムシ)】
      ↓   ↓   ↓
 http://sallygenak.livedoor.blog/archives/2018-0519







キイロクビナガハムシ(ハムシシ科)【12:47】
SK-4221a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

外見が似た数種(アカクビナ、ホソクビナガ、ユリクビナガなど)がいます。
ここでは触れませんが、微妙な特徴によりキイロクビナガと判断しました。

 ⇒体色(上翅)は赤いのに、キイロクビナガハムシとされる件では、
  多くのネット記事でも、そのことを揶揄(?)しています・・・?!







本日の最後の写真となりますが、探索開始から15分経過して、
10種の同定可能な虫たちの写真を撮ったことになります。
ある程度予想されたことですが、最初は順調です。


キクスイカミキリ(カミキリムシ科)【12:47】
SK-4224a
2020年5月23日 だんぶり池・青森

細長い黒色のカミキリで、胸部によく目立つ赤い紋があります。
幼虫は、ヨモギなどのキク科植物の茎の中で育ちます。






(次回に続きます)






スゲハムシというちょっとだけ不思議なハムシの仲間がいます。

別名をキヌツヤミズクサハムシと言いますが、その名のとおり、
主に湿地や池の周辺のスゲが生えている場所で見つかります。

 ⇒だんぶり池周辺では、結構頻繁に出会うのですが、
  日本国内の採集例などをみると、かなり局在化しているようで、
  絶滅危惧種に指定されている都府県もあります【注】


そんなスゲハムシの最大の特徴が、体色変化が著しいことです。

一般的な銅色の個体が多いようですが、微妙な変異があって、
大別すると、赤紫・青・緑・金(黄?)などの個体がいます。
ただ後述のように、青色個体は、雄にだけ出現するようです。


(虫たちの色彩型に関しては、以下の記事をご覧ください)

  【本当に同種なの?(3/9)・・・色彩型①】
      ↓   ↓   ↓
   http://sallygenak.livedoor.blog/archives/2017-0111






以下、早春のだんぶり池周辺で見られたスゲハムシの写真です。


スゲハムシ(ハムシ科)

SK-4172a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

だんぶり池では、最も普通に見られる青色タイプの雄です。

ネット情報によると、青色体色は雄のみに出現するとされ、
確かに、交尾中のカップルで見る限り、青色の雌は発見されません。

 ⇒念のため、パソコンに保存されているこれまでに撮った、
  全てのスゲハムシの交尾写真を確認してみましたが、
  青色個体が下になっている(?)例はありませんでした。






スゲハムシ交尾中(青色雄×赤紫色雌)

SK-4167a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

まるで別種同士が交尾しているような、青色雄と赤紫色雌のカップルです。

スゲハムシは、主な食草が水際のスゲであることが名前の由来ですが、
冒頭に書いたように、別名を「キヌツヤミズクサハムシ」とも呼ばれるので、
基本の体色は、赤紫色(キヌツヤ?)なのかもしれません。






スゲハムシ(ハムシ科)
SK-4168a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

だんぶり池では、青色タイプに次いで普通に見られる金色タイプです。
むしろ黄色なのかもしれませんが、金属光沢のような気もするので・・・






スゲハムシ交尾中(金色雄×赤紫色雌)SK-4174a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

先に、体色は赤紫色(キヌツヤ?)が基本タイプかも、と書きましたが、
ネット写真を確認すると、赤紫色タイプは普通に見られるようです。






スゲハムシ交尾中(金色雄×金色雌)
SK-4170a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

むしろ珍しいくらいの同色タイプ同士のカップルですが、
よく見ると、微妙に色が違っているようです。

 ⇒今回撮影できた合計7組の交尾カップルは、
  上記カップル以外は、全て異色同士の組み合わせでした。
  






以下の4カップルは、いずれも雄の体色は青色でした。


スゲハムシ交尾中(青色雄)
SH-8868a
2020年5月13日 だんぶり池・青森

青色雄は、伴性遺伝している可能性があると思いますし、
おそらく学術的な研究も行われているはずです。

しかし・・・冒頭のように絶滅危惧種なので???



【注】以下、スゲハムシに関するネット情報です。

   絶滅危惧1類: 千葉県、東京都、大分県
   絶滅危惧2類: 大阪府、鳥取県
   準絶滅危惧種: 埼玉県、愛知県、兵庫県、島根県、広島県

   なお、弘前市のだんぶり池周辺では、毎年普通に見られます。





自宅から数10m離れた小さな公園に、1本の桜の老木があって、
たまに(!)ゴミを捨てに行ったときに、幹にいる虫たちを見ていました。

何と、その桜はうす緑色の花を咲かせる御衣黄桜(ギョイコウサクラ)だったのです。

弘前に移り住んでから10年以上になりますが、
この桜の木の存在を知ったのは、ごく最近のことです。

小さな公園なので、看板などはなく、まさか桜の花が咲いているとは思わずに、
近所に住む人たち(私も含めて!!)の多くは、さりげなく通り過ぎていくだけ・・・?

 ⇒それほど目立たない「サクラ」の種類にもかかわらず、
  古く江戸時代に、京都の仁和寺で品種改良(?)されてから、
  かなりのマニアの間で、珍重されていたのかもしれません・・・(多分?)



 

・・・というわけで、
御衣黄桜は、あまり存在が知られていない珍しい桜ですが、
実は、沖縄を除く全国100ヶ所以上で見ることができるようです。


しかし、サクラの花が、うす緑色だなんて!!

一体どんな雰囲気の花を咲かせるのでしょうか?








出し惜しみではありませんが、とりあえず普通のサクラから・・・


多分ソメイヨシノ(バラ科)
SK-4025a
2020年4月27日 弘前市・青森

このピンク色のサクラの花は、遠くから見ても、近くによって見ても,
絵になり、写真になる「日本を代表する花」だと思います。








多分ソメイヨシノ(バラ科)
SK-4069a
2020年5月1日 弘前市・青森

やはり桜の花は、毎年毎年こんな風に咲いて、すぐに散ってしまうところが、
心に残る春の風景の一部として、ずっと愛される花なのかもしれません。









そして、うす緑色の桜の花は??


御衣黄桜(バラ科)
SK-4139a
2020年5月12日 弘前市・青森

御衣黄桜は、ソメイヨシノが散って葉桜になっってしまった頃に、
その葉っぱと同じようなうす緑色の花を、こんな雰囲気で咲かせるのです。







御衣黄桜(バラ科)

SK-4143a
2020年5月12日 弘前市・青森

開花したばかりの花は淡い緑色で、若葉のような色合いで、
ピンクの桜の花が散った後に、ひっそりと咲いています。

日本人の「わびさび」の心の中に、さりげなく溶け込んだのかもしれません。









御衣黄桜(バラ科)

SK-4186a
2020年5月15日 弘前市・青森

名前の御衣(ぎょい)とは、貴族の着物のこと意味し、緑色の花びらが、
平安時代の貴族の衣服の萌黄色に近いことが由来とされます。

 ⇒ネット情報では、萌黄色(もえぎいろ)とは、
  春先に萌え出る若葉のようなさえた黄緑色のことを言います。


花の色は、徐々に黄色っぽく変化していき、
やがて花びらの中心部が赤く染まってきます。








御衣黄桜(バラ科)
SK-4148a
2020年5月12日 弘前市・青森

確かに、この淡い緑色は、中心部に紅色の条線【注】と相まって、
さりげなく上品な雰囲気を醸し出しています。

この紅色の条線(のアクセント)があればこその「緑色の花」だと思います。

【注】花にやってきた虫たちを、蜜のあるところまで誘導するために、
   いわゆる「ネクターガイド」としての役目があるはずです。








最後にもう一度、花の色の違いを、同時比較してみました。


ピンクとグリーンの桜の花
SH-8869a
左:ソメイヨシノ 2020年4月27日 弘前市・青森
右:御衣黄桜 2020年5月12日 弘前市・青森


派手な桜花の時期が終わった頃に咲く、目立たないうす緑色の花!!
比較してみれば違いは明らかで、あとは好き嫌いの問題です。

 ⇒ありがちな意見ですが、私は両方とも好きです。



絶妙の品種改良を行った(と思われる)京都・仁和寺の植木職人さんに、
静かに拍手を送りたい気持ちです・・・





前回の記事の中で、「ナガメが交尾していた黄色の花」は、
ハルザキヤマガラシという帰化植物で、これまでの菜の花とは、
微妙に雰囲気が異なっていました。

 ⇒数年前から、特に目立つようになったと思いますが、
  弘前市周辺の空き地や河川敷などに咲く「菜の花に似た植物」は、
  昔からの見ていた「菜の花=アブラナ?」ではなく、
  多くがハルザキヤマガラシであるような気がします。


・・・と言うことは、
従来からあった「菜の花」は、どうなってしまったのでしょうか?
軽く調べてみると、意外な事実があることが分かりました【注】





日本には、各地に観光客が訪れる広大な「菜の花畑」があります。
写真で見る限り、(今はやりの!)かなり密な状態で咲いていますので、
いずれもハルザキヤマガラシではなさそうです。

ネット情報では、北海道の滝川市や、青森県の横浜町、秋田県の旧八郎潟、
そして、千葉県の房総半島南部などが有名とされています。

 ⇒全くの偶然ですが、上記の北海道以外の3か所には、
  それぞれ一度だけですが、花のシーズンに訪れたことがあります。










下の写真は、10年前に伊豆半島で撮ったものです。


早春の菜の花畑(静岡2010)
SG-0030a
2010年3月27日 南伊豆・静岡

はっきりとは覚えていませんが、観光地図などに記載されているように、
この花は、普通にアブラナと呼ばれている種類だったような気がします。

少なくとも、観光地の大群落になるような菜の花は、種から育てたもので、
帰化植物ハルザキヤマガラシではないはずです。

 ⇒念のため、写真の二人の女性は、私のことを「お父さ~ん!」と呼びます。







次は、今年撮った青森県の菜の花です。


早春の菜の花畑(青森2020)
SK-4072a
2020年5月1日 志賀坊森林公園・青森

これだけ密集している大群落なので、人工的な雰囲気もあって、
こちらもハルザキヤマガラシではないようです。

 ⇒これだけの密集した大群落になるには、
  やはり人為的な仕業があったものと思います。










帰化植物ハルザキヤマガラシは、まだそれほどの大群落にはならないようです。


ハルザキヤマガラシ(アブラナ科)
SK-4193a
2020年5月17日 弘前市・青森

確かに、現在流行語にもなっている「密」の状態ではありません。

最近のことかもしれませんが、こんなイメージで弘前市では黄色の花の群落を、
雑草地や空き地、果樹園の片隅などで頻繁に目にするようになりました。

 ⇒弘前の帰化植物と言えば、ニセアカシアやオオハンゴンソウが有名ですが、
  それらと全く同じような状況になるのかもしれません。









ハルザキヤマガラシ(アブラナ科)
SK-4121a
2020年5月12日 弘前市・青森

こうして、荒れ地に進出しているようで、来年春にはもっと・・・!

 ⇒ネット情報では、在来種の植物を駆逐する恐れがあるため、
  自然度の高い国定公園などでは駆除が実施されています。









ハルザキヤマガラシ(アブラナ科)
SK-4124a
2020年5月12日 弘前市・青森

昔は、こんな雰囲気で菜の花(アブラナ?)が咲いていると、
必ずと言って良いほど、ナガメのカップルが交尾していました。

 ⇒ナガメだって、微妙に好き嫌いがあるのかもしれません。










ハルザキヤマガラシ(アブラナ科)
SK-4120a
2020年5月12日 弘前市・青森

一般的に、アブラナ科植物は形態的な変異に富んでいるとされていますが、
その見た目とは反対に、交雑して雑種が生まれやすいようです。

 ⇒葉っぱの付き方や形状などで他種との識別可能とされますが、
  同種だけでなく他種の花粉によって結実してしまいます。
  もちろん花粉を運ぶ虫たちは、種の識別はする必要ありません。


なので、学術的な分類の困難な品種も多く、お手上げ状態のようです。

もちろん、学術的な問題点だけではなく、
固定種や在来品種を維持するために自家採種を行っている農家にとっても、
種苗用の種子生産では交雑を避けるために隔離栽培が必要となってきます。





【注】実は、本家の「菜の花」の方も、いわゆる帰化植物のようなのです。
   ネット情報ですが、いわゆる菜の花にも、いくつかの種類があって、
   しかも簡単に交雑するので、種類を特定するのは難しいようです。

   以下代表的な菜の花と学名ですが、実際には交雑します。
   (1)アブラナ Brassica rapa 
   (2)セイヨウアブラナ Brassica napus 
   (3)セイヨウカラシナ Brassica juncea
   (4)ハルザキヤマガラシ Barbarea vulgaris

   アブラナは、古くから野菜として、
   また油を採るため栽培されてきた作物で、
   別名としてナノハナやナタネと呼ばれることがあります。

   セイヨウアブラナは、明治以降に植物油の原料として栽培されています。
   明るい黄色が畑を覆う「菜の花畑」として春の風物詩となっています。
   スーパーで売られている『菜の花』は、畑で栽培されたセイヨウアブラナです。

   セイヨウカラシナは、その名のとおり辛子の原料として栽培されています。
   河川敷などに広がる菜の花畑の多くは、セイヨウカラシナのようです。

   ちなみに、明らかに見た目が異なるハルザキヤマガラシは、属が異なります。
   また、栽培されたり、食料となったりすることはありません。






弘前市周辺でも、ようやく虫たちの姿が普通に見られるようになってきて、
待ちに待った「本格的な虫のシーズン」が、さりげなく始まった。

しかしながら最近は、視力の衰えを感じるので、普通に歩いていて、
体長5mm前後の虫たちを、すぐに発見できなくなった。

 ⇒その代償として、怪しいと思った植物を、立ち止まって念入りに調べるので、
  思いもよらない虫たちの姿を、すぐ目の前で見ることができる。



ただ、歩きながら虫を見つけた瞬間に、
「ん! 何だこれは?」
と思ってしまうようなことが、ちょっとだけ増えたようだ・・・??







==== 擬 死?? ====


ウスアカオトシブミ雌(オトシブミ科)
SK-4118a
2020年5月8日 弘前市・青森

最初に見つけたときは、脚をピンと伸ばして擬死したオトシブミが、
葉っぱに脚が引っかかって、地面に落下できなかったのかと思った。

 ⇒特にハムシの仲間によく見られる行動なのだが、
  より鮮明に撮ろうとしてカメラをそっと近付けると、
  ポロッと下に落ちてしまうことが多いのだ。







ウスアカオトシブミ雌(オトシブミ科)
SK-4098a
2020年5月8日 弘前市・青森

このように死んだふりをする虫たちの行動を擬死(=死んだふり)と言うが、
このように、落下しないでそのまま状態でいるのは珍しいと思う。
 
もちろん、落下した虫たちは、そのままの格好(脚を縮めるか、ピンと伸ばす)で、
固まったように全く動かなくなってしまう。

 ⇒だから、一度地面に落ちてしまった虫たちを、
  地面で再び探し出すのは、かなり困難である。






ウスアカオトシブミ雌(オトシブミ科)

SK-4095a
2020年5月8日 弘前市・青森

しばらく様子を見ていたが、状況は全く変わらなかったので、
ほぼ間違いなく、葉っぱの上で擬死していたのだろう。

 ⇒試しに、枝をたぐりよせてみても、落下することはなかった。
  







==== テントウムシ?? ====


クロホシツツハムシ(ハムシ科) 
SK-4103a
2020年5月8日 弘前市・青森

最初に見つけたときは、何となく細長いテントウムシだと思った。

・・・と話の流れで、そう書いただけで、
本当に細長いテントウムシの仲間は、ジュウサンホシテントウしかいないかも?

 ⇒他に、ヒメカメノコテントウもやや細長い印象がある・・・


帰宅後にクロホシツツハムシと判明したが、斑紋の個体差がかなり大きいようだ。。 







クロホシツツハムシ(ハムシ科)
SK-4108a
2020年5月8日 弘前市・青森

この赤と黒の組み合わせは、典型的なミュラー型擬態の体色かもしれない。

ミュラー型擬態は、子供向けの写真集などでも紹介されるようになって、
多くの場合、次のように説明されている。

 ⇒何らかの防御手段を持つ虫たちは、
  捕食者が記憶しやすい派手な色の警戒色であることが多い。 
  そのような虫たちは、独自に別々の警戒色を持っているよりも、
  種を超えて同じような形態・色彩であった方が、
  犠牲となる個体が少なくなり、効率的である。


 (虫たちのミュラー型擬態に関しては、以下の記事をご覧ください)

  【虫たちの生き残り戦略⑦ ミュラー型擬態(目立つ色で危険を知らせる)】
      ↓   ↓   ↓
   http://sallygenak.livedoor.blog/archives/2017-0310









==== 菜の花とナガメ?? ====


ナガメ(カメムシ科)
SK-4116a
2020年5月8日 弘前市・青森

最初に見つけたときには、いつものように菜の花【注】にナガメがいると思った。

こんな黄色の花の群落を、河川敷や空き地でよく目にすると感じていたが、
近づいてよく見ると、菜の花とは雰囲気が明らかに違う。

手持ちのやや古い植物図鑑には掲載されていない・・・と言うか、影も形もない。

 ⇒ネットで検索してみると、どうやらハルザキヤマガラシという、
  関東以北で大群落をつくる帰化植物らしいことが判明した。

もちろん、アブラナ科なので、ナガメが集まるのは納得できる。



【注】菜の花は、アブラナ科植物の黄色い花の総称で、特定の植物名ではない。
   一般的には、セイヨウアブラナとセイヨウカナシナの花とされる。
   有名な与謝蕪村の俳句「菜の花や月は東に日は西に」は、
   江戸時代に詠まれたものなので、いわゆる菜の花畑は、
   また別の種なのだろう・・・(多分)







ナガメ交尾中(カメムシ科)
SK-4100a
2020年5月8日 弘前市・青森

本来の目的であるナガメの方も、ちょっとだけ不思議な交尾だった。

周辺の花には、他の個体は全く見られなかったのだが、
何と、この花だけに4匹が集まっていて、まさに交尾中だったのだ。

 ⇒うまく写真が撮れなかったのだが、実は2組のカップルが、
  折り重なるように、十字形で交尾しているように見えたのだ。





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