(前回からの続きです)


日本国内に分布するカミキリの仲間は、約800種類が知られているようですが、
そのうち普通に(?)見られるのは、おそらくその半分程度かもしれません。

このシリーズでは、私が現在までに撮ることができた約80種の中から、
成虫が何らかの「捕食者に対する防御手段」を持つと思われる種類を選択して、
撮影順(!)に並べてみました。






11: エグリトラカミキリ(カミキリムシ科) 
11 SG-3682a
2011年6月26日 白岩森林公園・青森

 ➡➡➡ ベイツ型擬態(?): モデルは小さなハチ

前回の「07: クロトラカミキリ」とよく似ていますが、背景の状況では、
小さなハチに見えることがあります。

 ⇒いずれにしても、このような黄色と黒色の模様は、よく目だつので、
  人間の世界(?)でも、道路標識などで使われています。
  
  






12: ホソツツリンゴカミキリ(カミキリムシ科) 
12 SG-4148a
2011年8月2日 だんぶり池・青森

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはホタル
または、
 ➡➡➡ 隠蔽的擬態: モデルは枯れ枝(?)

赤と黒のツートンカラーで、ホタルに似ています。
ただ、身体が極端に細長いので、枯れ枝に静止していると、
隠蔽的擬態の範疇になるのかもしれません。








13: シラフヒゲナガカミキリ(カミキリムシ科)
13 SG-4259a
2011年8月15日 乗鞍高原・長野

 ➡➡➡ 保護色: 背景は樹皮や地衣類

上の写真でも、瞬間的に探し出すのは難しいほど、背景に溶け込んでいます。
 ⇒撮影時は、さりげなく上を見上げたときに偶然に見つけたので、
  カミキリを見つけて、ちょっとだけビックリしました。

しかし、葉っぱの上で静止している場合は、カミキリの輪郭がはっきり見えて、
当然のこととして、かなり目立つ存在になってしまいます。

 【ヒマを見つけて擬態の話《3》 隠蔽的擬態のあれやこれやの話 】
     ↓   ↓   ↓








14: アカネカミキリ(カミキリムシ科)  
14 SG-5026a
2012年5月18日 白岩森林公園・青森

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはアリ

最初に見つけたときには、よく見かける「ムネアカオオアリ」と間違えました。

 ⇒ただ、このとき以来、アリと間違えることはなくなりましたが・・・!!

 【アリのようなカミキリ発見!!】
    ↓   ↓   ↓








15: マツシタトラカミキリ(カミキリムシ科)  
15 SG-2113a
2012年6月19日 白岩森林公園・青森

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはアリ

撮影アングルや距離にもよりますが、前種(14)よりもっと、
サイズ的にも「ムネアカオオアリ」に似ています。

 ⇒こっちの方は、たまに間違えます。

 【マツシタトラカミキリ? ムネアカオオアリ??】
    ↓   ↓   ↓








16: ヤツメカミキリ(カミキリムシ科)  
16 SG-5375a
2012年6月20日 芝谷地湿原・秋田

 ➡➡➡ 警戒色: 微妙な有毒植物を食べる (サクラやウメの葉っぱ)

緑がかった黄褐色の微毛で覆われた綺麗な体長は15mm程度のカミキリ。

一般的な構造色による金属光沢ではないが、まるで警戒色のようによく目立つので、
捕食者が非生物(食べ物でない)と判断する可能性があります。


カミキリムシ科の中でも、トホシカミキリやシラホシカミキリ、ラミーカミキリなど、
トホシカミキリ族 (Saperdini)の仲間は、美麗種あるいはよく目立つ種が多い【注】ので、
捕食者に何かしらの特別な信号を発信して、捕食されにくくしている可能性もあります。

 ⇒トホシカミキリ族のカミキリ成虫は、寄主植物の葉を後食し、
  その多くが微妙な有毒植物(?)と思われる場合もあるので、
  何らかの関連があるのかもしれません。




【注】トホシカミキリ族 (Saperdini)は、以下の17種が知られていますが、
   その多くはいわゆる美麗種で、葉っぱの上にいるとよく目立ちます。
   成虫は寄主植物の葉を後食しますが、微妙な有毒植物(*)のようです。

   ムネモンヤツボシカミキリ Saperda tetrastigma  サルナシ、ツルアジサイ
   ハンノキカミキリ Cagosima sanguinolenta  ハンノキ
   ヨツキボシカミキリ Epiglenea comes comes  ヌルデ、ネムノキ、ヤマウルシ
   ヤツメカミキリ Eutetrapha ocelota  ウメ、サクラ、シナノキ
   シラホシカミキリ Glenea relicta relicta  リョウブ、オヒョウ、アジサイ
   ラミーカミキリ Palagrenea frotunei  ラミー、カラムシ、イラクサ
   ニセシラホシカミキリ Pareutetrapha simulans  サワフタギ、ツルハシバミ
   フチグロヤツボシカミキリ Pareutetrapha eximia  ホオノキ、コブシ
   キクスイカミキリ Phytoesia rufiventris  ヨモギ、キク
   ヒゲナガヒメルリカミキリ Praolia citrinipes   アブラチャン、リョウブ
   アサカミキリ Thyestilla gebleri  アサ、ラミー
   リンゴカミキリ Oberea japonica  ナシ、リンゴ、モモ、ナナカマド
   ヒメリンゴカミキリ Oberea hebescens  クスノキ、クロモジ、アブラチャン
   ホソキリンゴカミキリ Oberea infranigrescens  フジ、ハギ、アジサイ
   ホソツツリンゴカミキリ Oberea nigriventris  イケマ
   シラハタリンゴカミキリ Oberea shirahatai  スイカズラ
   ヘリグロリンゴカミキリ Nupserha marginella  アザミ

   (*)以下の過去記事で紹介したように、捕食者の好き嫌いによって、
    微妙に捕食を免れている場合もありそうです。

    【警戒色の虫たちと有毒植物① 葉っぱの味は?】
       ↓   ↓   ↓
     
    【警戒色の虫たちと有毒植物② 虫たちにも好き嫌い】
       ↓   ↓   ↓
     
    【警戒色の虫たちと有毒植物③ アブラナ科】
       ↓   ↓   ↓
     
    【警戒色の虫たちと有毒植物④ イラクサ科】
       ↓   ↓   ↓
     
    【警戒色の虫たちと有毒植物⑤ セリ科】
       ↓   ↓   ↓
    







17: ホタルカミキリ(カミキリムシ科)  
17 SG-2130a
2012年6月27日 蓮華温泉・新潟

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはホタル

名前からして、明らかにホタルに似ています。

 ⇒この配色の「ゲンジボタル」などは、体内に不味成分を持っていて、
  捕食者は避けることが知られています。







18: ハンノキカミキリ(カミキリムシ科)  
18 SG-5531a
2012年6月28日 燕岳山麓・長野

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはホタル

この写真では多少分かりにくいかもしれませんが、胸部が赤色なので、
大まかには「ゲンジボタル」のようなイメージだと思います。

 ⇒モデルになっているのか、確かではありませんが、
  「アカヘリサシガメ」や「ルイスクビナガハムシ」にも、
  微妙に似ているかもしれません。








19: ムネアカクロカミキリ(カミキリムシ科)  
19 SG-2796a
2013年6月2日 東海村・茨城

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルはホタル

クロハナカミキリの雌にも似ていますが、写真同定はできません。

 ⇒ここではムネアカクロハナカミキリとしましたが、
  ネット情報による識別方法は、確認できませんでした。
  ただ写真で見る限り、腹部の先端が凸になっているようです。
   







20: ヨツキボシカミキリ(カミキリムシ科)  
20 SG-6310a
2013年6月4日 小舟野沢林道・茨城

 ➡➡➡ ベイツ型擬態: モデルは小さなハチの仲間

黄色と黒色の模様は、緑の葉っぱの上では、確かによく目立ちます。

逆に、この配色でハチに似ていない(=捕食者に見破られる)ならば、
よく目立つので、簡単に見つかって食べられてしまうはずです。





(このまま次回に続きます)