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乗鞍高原は、日本のほぼ真ん中にあって、平地と山地にいる虫たちが共存(多分)し、
しかも、車でも簡単に行ける虫たちの撮影スポットです。
今更ながら思い返せば、私の場合は「東京・徳島・青森」に住んでいても、
長野県にある乗鞍高原には、数えきれないほど訪れていて、
特に定年退職してからは、青森県以外の「お気に入りの撮影スポット」になっています。
そんな乗鞍高原のキャンプ場付近にある静かな池のほとりで、落ち葉の中に、
まるで人工物のようにキラキラ輝く青い虫を見つけました。
今回の「記憶に残る虫」は、初見の希少種ヒメツチハンミョウです。
ヒメツチハンミョウ(ツチハンミョウ科)
2010年9月26日 乗鞍高原・長野
ツチハンミョウの仲間は、姿かたちだけでなく、生活史もかなり奇妙です。
身体のすべての部分が、同じ光沢のある青藍色に統一されています。
触角がありえない場所が平たく膨らんでいるので、この個体は雄のようです。
胸部には、全く飛ぶことができないような小さな翅があります。
そして腹部は、雄なのにまるで妊婦のように膨らんでいます。
⇒こんな見た目だけでも、本種は「かなり不思議な雰囲気」を持っているのです。
しかし、不思議なのは、見た目だけではありません。
ヒメツチハンミョウ(ツチハンミョウ科)
2010年9月26日 乗鞍高原・長野
ツチハンミョウの仲間の不思議な生活史は、ファープル昆虫記にも出てきます。
越冬後の雌は、土の中に4000個以上の卵を産みます。
この数は、通常の昆虫の産卵数ではありません。
そして、孵化した1齢幼虫は、周辺のアザミなどの花によじ登ります。
自分で花の蜜を吸うためではなく、そこでハナバチが来るのを待つのです。
ハナバチが来ると、強靭な大あごと肢の爪で、ハナバチの毛にしがみつき、
そのままハナバチの巣に運ばれていきます。
巣の中に入った1齢幼虫は、そこでハナバチの卵を食べます。
脱皮した2齢幼虫はイモムシ状になり、蜜の上に浮いて蜜を吸うのです。
その後3齢幼虫になると、また体型が変化し、サナギのような擬蛹になります。
さらに、擬蛹の中で、またイモムシ状の4齢幼虫になり(逆戻りの変態?)、
まもなく通常の蛹となって、写真のような成虫となるのです。
写真のような成虫は、林床や草地を徘徊し、苔などを食べているようです。
⇒このような特徴的な変態を「過変態」と呼びますが、
何故、3齢幼虫が蛹に似た姿になるのかも含めて、
まだ明確に解明されてはいないようです。
もう一つの大きな特徴は、ツチハンミョウの仲間はカンタリジンという猛毒を持つので、
不用意に触れると強い痛みを感じ、水泡を生じることがあります。
⇒カンタりジンを持つ昆虫類は、予想外に沢山の種類で見つかっており、
ツチハンミョウ類の他にも、ジョウカイボン類、カミキリモドキ類、
アリモドキ類、ハネカクシ類などが知られています。
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