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前回のアカハネムシと同様に、ベニボタル類に似せ捕食される機会を減らす種が他にもいます。
ベニボタル類で嫌な経験をした捕食者は、そんなよく似た虫たちも区別なく食べようとしません。
このような現象を、発見者の名前を付けて「ベイツ型擬態」と呼んでいます。
ベニボタル類で嫌な経験をした捕食者は、そんなよく似た虫たちも区別なく食べようとしません。
このような現象を、発見者の名前を付けて「ベイツ型擬態」と呼んでいます。
⇒ベイツ型擬態のちょっとだけ不思議な話題については、
以下のブログ記事をご覧ください。
【ヒマかもしれない擬態の話《6》 ベイツ型擬態のまとまりのない話】
↓ ↓ ↓
まずは、モデル種となった典型的な警戒色のベニボタル類の写真から・・・
カクムネベニボタル(ベニボタル科)
2021年5月18日 五城目・秋田
一般的な傾向として、派手な色彩の虫たちは、日当たりの良い明るい場所に、
地味な色彩の虫たちは、日の当たらない薄暗い場所にいることが多いようです。
⇒特に春の新緑の季節には、日当たりのよい葉っぱの上に
警戒色の虫たちが普通に目に付きます。
どうせ捕食者に食われることがないのなら、別に体色は、
どんな色でも関係ないと思われがちだが、実際には、
有毒種(不味成分を体内に保持する)種は、ほとんどが警戒色です。
以下の4枚の写真は、よく似た無毒のニホンベニコメツキです。
ニホンベニコメツキ(コメツキムシ科)
2023年5月21日 浄仙寺・青森
もちろん、ほとんどの人たち(野鳥類も!)は、ベニボタルと間違えます。
でもよく見ると、胸部背面の形状とうすい赤色が、ベニボタルではなさそうだし、
前回のアカハネムシとも微妙に違うように感じます。
⇒本種の前胸背は周縁と中央にある縦条が暗い黄赤色をしており、
他のコメツキと同じように後角が尖る(!)ことで区別できます。
他のコメツキと同じように後角が尖る(!)ことで区別できます。
ニホンベニコメツキ(コメツキムシ科)
2023年5月22日 編笠林道・青森
試しに手持ちの図鑑で、コメツキ類の写真が並んでいるページを見ると、
なんかの間違いのように、べニコメツキが載っており以下の解説文があります。
頭部前方の凹みと後方の2紋・胸背の周縁と中央の2縦条は黄赤褐色である。
頭胸背は粗く点刻され、胸背は中央後と背部両側に円い凹みがある・・・
これでは、野鳥類も虫マニアも識別不能です・・・?
ニホンベニコメツキ(コメツキムシ科)
2023年5月24日 弘前市・青森
いや、混乱するのは虫マニアだけで、野鳥類はそんなこととは無関係に(!)、
全く区別することなく、全てのよく似た虫を避けるはずです。
⇒それこそが、ベイツ型擬態が成立する理由だと思います。
ニホンベニコメツキ(コメツキムシ科)
2023年5月24日 弘前市・青森
いずれにしても、捕食者はベニボタルの派手な色彩と不味成分を関連付けて、
覚えていることが必須条件なのです。
この覚えているという条件は、脳神経系と視覚などの感覚器が発達した、
学習可能な捕食者(多分脊椎動物以上!)に限られることを意味します。
⇒ということは、カマキリやクモなどに対しては、
ベイツ型擬態は全く無効であることを示しているのです。
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